a curator's memorandum

1日1本論文を読んでメモする、論文マラソンをやっています。

2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

論文マラソン76 中原佑介「けちんぼうな芸術家たち ミニマル・アートについて」

中原佑介「けちんぼうな芸術家たち ミニマル・アートについて」(初出『美術手帖』310号、1969年3月)。 芸術の有用性―手仕事か機械仕事か 芸術とテクノロジー 芸術家は「つくる」人間か 〇現代美術の動向の中で、「手仕事か機械仕事か」という問題提起がなさ…

論文マラソン75 西村智弘「「1995年問題」と絵画の変遷ーモダニズムとポストモダニズムの対立を超えて」

西村智弘「「1995年問題」と絵画の変遷ーモダニズムとポストモダニズムの対立を超えて」(『第1回所沢ビエンナーレ美術展』図録、所沢ビエンナーレ実行委員会、2009年)。 1. 1995年問題とは何か 2. 1990年以前の絵画 3. 1990年代前半の絵画 4. 1995年の絵画 5…

論文マラソン74 熊谷伊佐子「榎倉康二の写真作品について」

熊谷伊佐子「榎倉康二の写真作品について」(『明星大学研究紀要【造形芸術学部・造形芸術学科】』第20号、2012年)。 〇榎倉康二(1942~1995)は1969年の個展、友人たちとのグループ展を経て1970年の「第10回日本国際美術展<人間と物質>」に出品、注目を集…

論文マラソン73 大澤慶久「高松次郎《日本語の文字》《英語の単語》再考―複製メディア時代の芸術作品におけるオリジナルとコピーの問題を軸に―」

大澤慶久「高松次郎《日本語の文字》《英語の単語》再考―複製メディア時代の芸術作品におけるオリジナルとコピーの問題を軸に―」(『美学』71(2)、2020年12月)。 序 1章 これまでの解釈 1節 版画(オフセットリトグラフ)という芸術形式 2節 画面の荒れ 3節 記…

論文マラソン72 田中修二「日本彫刻史の中の岡本太郎」

田中修二「日本彫刻史の中の岡本太郎」(『岡本太郎 立体に挑む~造形のなぞにせまる~』図録、川崎市岡本太郎美術館、2008年)。 1 彫刻家・岡本太郎 2 岡本太郎の彫刻の範囲 3 空間 4 土のイメージ 5 植物、人体、モニュメント 〇岡本太郎は一般的に画…

論文マラソン71 田中正之「抽象写真かシュルレアリストか―1920年代後半から30年代におけるマン・レイの日本での紹介をめぐって」

田中正之「抽象写真かシュルレアリストか―1920年代後半から30年代におけるマン・レイの日本での紹介をめぐって」(『美術フォーラム21』第23号、2011年5月)。 〇現在の理解とは異なり、1920年代後半から1930年代初頭にマン・レイが紹介された当時、村山知義…

論文マラソン70 塚田美香子「日本におけるピカソの受容と歴史的回顧―影響、批評、収集の軌跡」

塚田美香子「日本におけるピカソの受容と歴史的回顧―影響、批評、収集の軌跡」(『館報』第58号、石橋財団ブリヂストン美術館、2010年)。 Ⅰ 1950年代―戦後復興期の国内初のピカソ展 1戦時下の日本美術界とピカソの"婦人像”の受容 2戦後のピカソ訪問 3戦後…

論文マラソン69 高松次郎「世界拡大計画(2)不在性について」

高松次郎「世界拡大計画(2)不在性について」(1970年3月)。 1 関係の発生 2 関係の分析と無関係性の基盤 3 関係の問題点 4 無関係性の発生と分析 5 無関係性のために 〇言葉は曖昧だけれども一度発生すると、ものにからみついて言葉と一体となる。…

論文マラソン68 東野芳明「美術とデザインの間」

東野芳明「美術とデザインの間」(『色彩と空間』展図録、南画廊、1966年)。 〇東野が企画した「色彩と空間」展図録によせたテキストである。出品作家は、サム・フランシス、アン・トゥルーイット、磯崎新、五東衛(清水九兵衛)、田中新太郎、三木富雄、山口…

論文マラソン67 伊村靖子「「発注芸術」再考 60年代美術と設計」

伊村靖子「「発注芸術」再考 60年代美術と設計」(東野芳明『虚像の時代 東野芳明美術批評選』2013年、河出書房新社) 「色彩と空間」展とは? 「プライマリー・ストラクチャーズ」展からの影響 「色彩と空間」展カタログー「美術とデザインの間」 美術のデザ…

論文マラソン66 天野知香「「他者」をめぐる交錯するまなざし―里見宗次と「オリエント・コールズ」」

天野知香「「他者」をめぐる交錯するまなざし―里見宗次と「オリエント・コールズ」」(『美術フォーラム21』第23号、2011年5月)。 「モダン」への覚醒 ポスターの「アール・デコ」 「オリエント・コールズ」 〇フランスに渡ったグラフィック・デザイナー里見…

論文マラソン65 鬼本佳代子「福岡市美術館における高齢者対象プログラムについて~内容・意義・課題~」

鬼本佳代子「福岡市美術館における高齢者対象プログラムについて~内容・意義・課題~」(『福岡市美術館研究紀要』第9号、2021年3月)。 はじめに 博物館と「高齢者」 高齢者の博物館園利用について 美術館・博物館での高齢者向けプログラムの試み 公民館で…

論文マラソン64 大城直也「ティーチャーズキットを活用した授業の実際」

大城直也「ティーチャーズキットを活用した授業の実際」(『美術館研究紀要』第2号、沖縄県立博物館・美術館、2012年3月)。 1 はじめに 2 ヴィジュアル・シンキング理論とティーチャーズキット 3 実際の活用(小学校授業参観) 4 実際の活用(中学校授業参観) 5 …

論文マラソン63 渡抜由季「サルバドール・ダリ《ポルト・リガトの聖母》に隠された構図の謎」

渡抜由季「サルバドール・ダリ《ポルト・リガトの聖母》に隠された構図の謎」(『福岡市美術館研究紀要』第9号、2021年3月)。 はじめに 2 作者と作品基本情報 3 予想される構図の検討 4 ダリが隠した構図の意味 5 まとめ 〇福岡市美術館所蔵作品である…

論文マラソン62 蔦谷典子「光の狩人 森山大道1965-2003」

蔦谷典子「光の狩人 森山大道1965-2003」(『光の狩人 森山大道1965-2003』図録、島根県立美術館ほか、2003年)。 第一章 にっぽん劇場写真帖 1965-1967 第二章 プロヴォークの時代 1968-1970 第三章 何かへの旅 1971-1973 第四章 ワークショップ写真学校、「C…

論文マラソン61 高松次郎「世界拡大計画 不在性についての試論(概説)」

高松次郎「世界拡大計画 不在性についての試論(概説)」(1967年6月)。 1 充足性について 2 不在性の発生 3 不在性の分析 4 実在に関する不在性 5 認識に関する不在性 6 イメージに関する不在性 7 不在性のために これまでも繰り返し高松が述べてき…

論文マラソン60 高松次郎「不在性のために」

高松次郎「不在性のために」(『眼』第8号、おぎくぼ画廊、1966年1月。『世界拡大計画』水声社、2003年に再録)。 美術家・高松次郎(1936-1998)の文章であり、60年代のキーワードでもある「不在」を使用した3つめのテキストである。当時高松は《影》連作を発…

論文マラソン59 西村智弘「日常性とコンセプチュアリズム―1990年代後半における日本の現代美術」

西村智弘「日常性とコンセプチュアリズム―1990年代後半における日本の現代美術」(『所沢ビエンナーレ美術展2011』図録、所沢ビエンナーレ実行委員会、2011年)。 1990年代の現代美術 1990年代前半の状況 1990年代のギャラリー状況 「これがぼくらの生きる道…

論文マラソン58 中原佑介「「木との対話」について相手のない対話」

中原佑介「「木との対話」について相手のない対話」(『art today '79 木との対話』1979年)。 〇「art today '79」の出品作家、最上壽之、小清水漸、彦坂尚嘉を挙げ、素材である「木」についてまず考察する。今世紀の美術の素材として「木」は少数派であり古…

論文マラソン57 平芳幸浩「日本におけるマルセル・デュシャン受容―瀧口修造を中心に」

平芳幸浩「日本におけるマルセル・デュシャン受容―瀧口修造を中心に」(『美術フォーラム21』23号、2011年5月)。 はじめに 1 超現実主義とデュシャン 2 瀧口―(ブルトン)―デュシャン 3 終わりにかえて―詩人瀧口修造とマルセル・デュシャン 〇日本でデュ…

論文マラソン56 大谷省吾「外山卯三郎―「純粋絵画」の名のもとに」

大谷省吾「外山卯三郎―「純粋絵画」の名のもとに」(『近代画説』第11号、2002年12月)。 北海道時代―新興美術運動への関心 『詩と詩論』への参加 1930年協会、独立美術協会とともに 純粋絵画論 前衛美術への態度 美術批評家協会の結成、そして戦争のなかで …

論文マラソン55 東野芳明「「色彩と空間」展 設計図にもとづき工場で制作される新しい表現方法「発注芸術」とは?」

東野芳明「「色彩と空間」展 設計図にもとづき工場で制作される新しい表現方法「発注芸術」とは?」(『美術手帖』276号、1966年12月) 〇近代になって建築や彫刻が、宗教的社会的な意味合いの強い「色彩」を追放し、一個の自立した作品となっていった。 〇19…

論文マラソン54 高松次郎「世界拡大計画―不在性についての試論」

高松次郎「世界拡大計画―不在性についての試論」(『機関』(『形象』改題)第9号、1964年9月。『世界拡大計画』水声社、2003年に再録)。 美術家・高松次郎(1936-1998)の文章であり、60年代のキーワードでもある「不在」を使用した2つめのテキストである。 …

論文マラソン53 尾崎信一郎「痕跡―苛酷なる現実としての美術」

尾崎信一郎「痕跡―苛酷なる現実としての美術」(『痕跡―戦後美術における身体と思考』図録、京都国立近代美術館ほか、2004-05年)。 序章 第1章 1.《赤い丸太》 2.《人体測定》 3.《無題(レイプ現場)》 4.《消されたデ・クーニングのドローイング》 5.《…

論文マラソン52 中原佑介「作家論 眞板雅文 物体と遺影」 

中原佑介「作家論 眞板雅文 物体と遺影」(『美術手帖』418号、1977年3月)。 〇眞板が写真を使用した作品を発表し始めるのは1971年頃からだが、パリからの帰国後(1973年)は写真と物体の組み合わせで作品が成立している。写真はその物体にとっての凍結された…

論文マラソン51 藤井匡『眞板雅文の彫刻=写真』

今回は書籍『眞板雅文の彫刻=写真』。美術家・眞板雅文(1944〜2009)の作品を1970〜80年代の日本の美術動向の中で捉え、彫刻と写真を不可分なものとして考えた論考。 特に第1章の「基本原理としてのコラージュ」を興味深く読んだ。70年代の「状況」シリーズ…

論文マラソン50 正路佐知子「美術館とフェミニズム―福岡市美術館の現状について」

正路佐知子「美術館とフェミニズム―福岡市美術館の現状について」(『福岡市美術館研究紀要』第9号、2021年3月)。 はじめに 美術とフェミニズム 日本の状況 福岡市美術館の現状 2019年に開催されたあいちトリエンナーレ2019において、芸術監督の津田大介は出…

論文マラソン49 東野芳明「女が彫刻を叩くとき―色彩彫刻の新しい波」

東野芳明「女が彫刻を叩くとき―色彩彫刻の新しい波」(『みづゑ』1966年8月号)。 東野による、アメリカで「プライマリー・ストラクチャー」展を観た後のアーティストたちの意見交換も含めた臨場感ある感想、批評である。 彫刻の新しい傾向であり、全くの工…

論文マラソン48 江川佳秀「柳亮―批評が作家をリードする―」

江川佳秀「柳亮―批評が作家をリードする―」(『近代画説』第11号、2002年12月)。 はじめに 柳亮前史 巴里藝術通信社 帰国後 戦後 おわりに 美術批評家・柳亮(1903〜1978)の生涯と特徴をたどる。文学、美術ともに関心が強く、制作を行なっていた。フランス留…

論文マラソン47 千田敬一「日本の近代彫刻とロダン」

千田敬一「日本の近代彫刻とロダン」(『ロダンと日本』展図録、静岡県立美術館/愛知県立美術館、2001年)。 はじめに ロダンと日本 日本におけるロダンの受容 ロダンに影響を受けた日本作家とその考察 まとめ 〇ロダン以前の洋風彫刻の日本への導入は政府主…