a curator's memorandum

1日1本論文を読んでメモする、論文マラソンをやっています。

2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

論文マラソン145 ジョン・ソルト「第5章 キット・カット(Kit Kat)とエズ・ポ(Ez Po」

ジョン・ソルト「第5章 キット・カット(Kit Kat)とエズ・ポ(Ez Po」訳:田口哲也(『北園克衛の詩と詩学 意味のタペストリーを裁断する』思潮社、2010年)。 〇アメリカの詩人、エズラ・パウンドと北園克衛は国を隔てていたが詩誌の交換などによる交流をして…

論文マラソン144 ジョン・ソルト「第4章 千の顔」

ジョン・ソルト「第4章 千の顔」訳:田口哲也(『北園克衛の詩と詩学 意味のタペストリーを裁断する』思潮社、2010年)。 〇1920年代後半から30年代初め、日本は不況に陥り、またプロレタリア文学が人気を集めていた。しかし北園は自分の詩を社会的、政治的…

論文マラソン143 ジョン・ソルト「第3章 文学上のシュルレアリスム」

ジョン・ソルト「第3章 文学上のシュルレアリスム」訳:小川正浩、ヤリタミサコ、田口哲也(『北園克衛の詩と詩学 意味のタペストリーを裁断する』思潮社、2010年)。 〇1927年北園は詩誌の編集を依頼され「薔薇・魔術・学説」を発行。上田敏雄・保兄弟らも…

論文マラソン142 ジョン・ソルト「第2章 ダダイズムとゲエ・ギムギガム・プルルル・ギムゲム」

ジョン・ソルト「第2章 ダダイズムとゲエ・ギムギガム・プルルル・ギムゲム」訳:小川正浩、ヤリタミサコ、田口哲也(『北園克衛の詩と詩学 意味のタペストリーを裁断する』思潮社、2010年)。 〇1923年関東大震災がおき、一時克衛は奈良に避難。24年に再び…

論文マラソン141 ジョン・ソルト「第1章 朝熊から東京へ」

ジョン・ソルト「第1章 朝熊から東京へ」訳:小川正浩、ヤリタミサコ、田口哲也(『北園克衛の詩と詩学 意味のタペストリーを裁断する』思潮社、2010年)。 〇第1章は北園の生まれ育った三重県朝熊の生活から始まる。本名は橋本健吉(1902~1978)。兄・橋本平…

論文マラソン140 桑原規子「戦後日本版画の世界進出―占領期から東京国際版画ビエンナーレ創設まで―」

桑原規子「戦後日本版画の世界進出―占領期から東京国際版画ビエンナーレ創設まで―」(『聖徳大学言語文化研究所論叢』16号、2008年)。 はじめに 1. 占領期の欧米人コレクターと創作版画 2. 創作版画の海外進出―国際展への参加 3. 「現代日本美術の国際選…

論文マラソン139 和田七洋「1960年代初頭における横尾忠則ポスター作品の変化に関する研究」

和田七洋「1960年代初頭における横尾忠則ポスター作品の変化に関する研究」(『鹿児島大学教育学部研究紀要』68号、2016年度)。 1. はじめに 2. 日本デザインセンターと市松模様 3. 京都労音ポスター『東京コラリアーズクール・プティ』分析 4. 市松模様…

論文マラソン138 山下寿水「サルバドール・ダリ《ヴィーナスの夢》における、塗り隠された縄跳びについての発見とその試論」

山下寿水「サルバドール・ダリ《ヴィーナスの夢》における、塗り隠された縄跳びについての発見とその試論」(『広島県立美術館研究紀要』第16号、2013年3月)。 0 要旨 1 はじめに 2 インスタレーションとしての《ヴィーナスの夢》 3 消えた縄跳びの記憶 …

論文マラソン137 加治屋健司「誤作動する武器―クレメント・グリーンバーグ、文化冷戦、グローバリゼーションー」

加治屋健司「誤作動する武器―クレメント・グリーンバーグ、文化冷戦、グローバリゼーションー」(『アメリカ研究』37号、2003年)。 はじめに 1 グリーンバーグと修正主義 2 修正主義に対する近年の見直し 3 アメリカ国外におけるグリーンバーグの受容 (…

論文マラソン136 関直子「マティスと1950年代前半の日本」

関直子「マティスと1950年代前半の日本」(『東京都現代美術館紀要』8号、2002年度)。 序 1 映画「マチス訪問」の上映 2 新作展としての1951年のマティスの個展 (1)開催の経緯 (2)展示構成 (3)礼拝堂 (4)油絵 3 福島繁太郎の「マティス以後…

論文マラソン135 関直子「マティスと1940年代の日本」

関直子「マティスと1940年代の日本」(『東京都現代美術館紀要』7号、2001年度)。 序 1. 1940年代の美術雑誌における、素描家としてのマティス 2. 1940年代のマティスの普及 (1)武者小路実篤の役割 (2)文学雑誌メディアー『別冊文芸春秋』の場合 (…

論文マラソン134 門田園子「海を渡った彫刻家具―横浜を中心に」

門田園子「海を渡った彫刻家具―横浜を中心に」(『家具道具室内史』9号、2017年6月)。 はじめに 1. 彫刻家具の製作と家具の種類・意匠パターン 2. 彫刻家具製作の担い手 3. 海を渡った彫刻家具 むすびに 〇江戸時代に成熟した大名や富裕町人によるパトロ…

論文マラソン133 池上裕子「巴里のアメリカ人 イリアナ・ソナベンド画廊の市場戦略」

池上裕子「巴里のアメリカ人 イリアナ・ソナベンド画廊の市場戦略」(『西洋美術研究』14号、2008年9月)。 序 1 戦後フランスにおけるアメリカ美術の紹介 2 アンフォルメルと抽象表現主義 3 ヌーヴォー・レアリスムとネオダダ、ポップ 4 イリアナ・ソナ…

論文マラソン132 伊村靖子「東野芳明の「反芸術」概念の展開」

伊村靖子「東野芳明の「反芸術」概念の展開」(『京都市立芸術大学美術学部研究紀要』56号、2012年)。 はじめに 「反芸術」の定義をめぐる経緯 シンポジウム「『反芸術』、是か非か」(1964年1月30日) 東野芳明によるパフォーマンスの意義 宮川淳との論争(…

論文マラソン131 大谷省吾「シュルレアリスムの影響を受けた日本の画家たちにおける、性と死の表象について―瑛九、矢崎博信、浜田浜雄を例に」

大谷省吾「シュルレアリスムの影響を受けた日本の画家たちにおける、性と死の表象について―瑛九、矢崎博信、浜田浜雄を例に」(『藝叢』22号、2005年)。 はじめに 第1章 変容する眼/瑛九 第2章 幻視される死/矢崎博信 第3章 二人の自分/浜田浜雄 おわりに…

論文マラソン130 久米淳之「ダリの映像表現をめぐって―イメージの連鎖とショック・モンタージュ」

久米淳之「ダリの映像表現をめぐって―イメージの連鎖とショック・モンタージュ」(『生誕100年記念 ダリ展―創造する多面体』図録、中日新聞社、2007年)。 シュルレアリストと映画 映画とダリ ダリの絵画と映像、そのイメージの連鎖 連鎖するショック・モンタ…

論文マラソン129 大谷省吾「作品研究 高松次郎の《日本語の文字》はなぜ版画でなければならなかったのだろう?」

大谷省吾「作品研究 高松次郎の《日本語の文字》はなぜ版画でなければならなかったのだろう?」(『現代の眼』576号、2009年6・7)。 〇高松次郎の《日本語の文字》は紙面中央に「この七つの文字」と記されているだけのシンプルな作品である。1970年12月の…

論文マラソン128 城山萌々「瑛九のリトグラフ:再現制作に基づく分版の仕組みの分析」

城山萌々「瑛九のリトグラフ:再現制作に基づく分版の仕組みの分析」(『芸術学研究』17号、2012年)。 1. はじめに 2. 日本におけるリトグラフ表現の変化とその背景 3. 再現制作に基づく分析の目的と方法 4. 分版の仕組みと表現の関係について 5. まと…

論文マラソン127 中嶋泉「ニューヨークと草間彌生―1959年と1989年の批評から見る―」

中嶋泉「ニューヨークと草間彌生―1959年と1989年の批評から見る―」(田中正之編『西洋近代の都市と芸術7 ニューヨーク』竹林舎、2017年)。 〇草間彌生のニューヨークにおける1959年と1989年周辺の批評をとりあげ、彼女の代表作ネット・ペインティングについ…

論文マラソン126 大谷省吾「作品研究 山田光春旧蔵瑛九作品および資料について」

大谷省吾「作品研究 山田光春旧蔵瑛九作品および資料について」(『現代の眼』612号、2015年6・7)。 〇東京国立近代美術館は平成24年度に瑛九(1911-1960)に関する作品と資料を多数収蔵した。これらは瑛九と親しく交流し、詳細な評伝『瑛九』を著した画家・山…

論文マラソン125 田中正之「クレス・オルデンバーグとニューヨークの街路―《ストリート》と《都市のスナップショット》をめぐって―」

田中正之「クレス・オルデンバーグとニューヨークの街路―《ストリート》と《都市のスナップショット》をめぐって―」(田中正之編『西洋近代の都市と芸術7 ニューヨーク』竹林舎、2017年)。 《ストリート》のインスタレーション 《ストリート》をめぐる解釈 …

論文マラソン124 白石美雪「ジョン・ケージと東洋、そして日本」

白石美雪「ジョン・ケージと東洋、そして日本」(田中正之編『西洋近代の都市と芸術7 ニューヨーク』竹林舎、2017年)。 1 西海岸の文化的環境の中で 2 ニューヨークにおけるケージと東洋の出会い (1)インド思想 3 ニューヨークにおけるケージと東洋の出…

論文マラソン123 桑原規子「1950年代における日米版画の人的交流―斎藤清・関野準一郎・棟方志功を中心に」

桑原規子「1950年代における日米版画の人的交流―斎藤清・関野準一郎・棟方志功を中心に」(『近代画説』22号、2013年)。 はじめに 3人の版画家の渡米 ジョン・ロックフェラー3世夫妻と戦後の日本版画 日本版画家の「相互交流」 1960年代の再渡米とネットワー…

論文マラソン122 千野香織「日本美術のジェンダー」

千野香織「日本美術のジェンダー」(『美術史』43(2)、1994年3月)。 はじめに 1 現代の美術史学と日本美術史 2 「ジェンダー」という概念 3 平安時代におけるアイデンティティの模索ー「唐」と「和」から成る二重の二重構造 4 ジェンダー理論から見た日本美…

論文マラソン121 エリオット・H・キング「ダリとハルスマン」

エリオット・H・キング「ダリとハルスマン」(『ダリとハルスマン』図録、諸橋近代美術館、2020年)。 〇ダリの最も有名なポートレートを撮影しているのはフィリップ・ハルスマン(1906-1979)である。37年にわたる交流で、有名な《ダリ・アトミクス》や、ダリ…

論文マラソン120 大島徹也「抽象表現主義のニューヨーク」

大島徹也「抽象表現主義のニューヨーク」(田中正之編『西洋近代の都市と芸術7 ニューヨーク』竹林舎、2017年)。 序 1 アート・ステューデンツ・リーグ・オブ・ニューヨーク 2 連邦美術計画 3 57丁目画廊 4 グリニッチ・ヴィレッジ 5 ニューヨーク近代…

論文マラソン119 江崎聡子「ダイアン・アーバス、不在のニューヨーク」

江崎聡子「ダイアン・アーバス、不在のニューヨーク」(田中正之編『西洋近代の都市と芸術7 ニューヨーク』竹林舎、2017年)。 はじめに 1 「ニュー・ドキュメンツ」展とダイアン・アーバス 2 ニューヨークの「裏側」や「地下」を見ること 3 カテゴリーか…

論文マラソン118 小林俊介「近代日本洋画におけるルオーの受容―技法・表現の側面から―」

小林俊介「近代日本洋画におけるルオーの受容―技法・表現の側面から―」(『ルオーと日本展 響き合う芸術と魂ー交流の百年』図録、パナソニック汐留美術館、2020年)。 梅原龍三郎ー「日本的洋画」の形成ー 三岸好太郎ーマチエールの多層性ー 難波田龍起、松本…

論文マラソン117 小林剛「アフター・イメージとしてのニューヨーク―モダニティとモダニズムの狭間で」

小林剛「アフター・イメージとしてのニューヨーク―モダニティとモダニズムの狭間で」(田中正之編『西洋近代の都市と芸術7 ニューヨーク』竹林舎、2017年)。 アルフレッド・スティーグリッツとピクトリアリズム ピクチャレスクなニューヨーク 象徴的なイコ…

論文マラソン116 池上裕子「冷戦の終結と現代美術のグローバル化―ロバート・ラウシェンバーグの国際交流プロジェクト―」

池上裕子「冷戦の終結と現代美術のグローバル化―ロバート・ラウシェンバーグの国際交流プロジェクト―」(田中正之編『西洋近代の都市と芸術7 ニューヨーク』竹林舎、2017年)。 ROCIの構想と実現への道程 ROCI Chinaの開催 歓迎されるROCI、反発されるROCI R…