a curator's memorandum

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論文マラソン185 金英那「解放後の韓国美術序説」

金英那「解放後の韓国美術序説」『韓国近代美術の百年』(神林恒道監訳、三元社、2011年)

 

〇戦後の韓国のアートシーンではまずモノクローム水墨画が挙げられる。彩色の水墨画は近代日本画を連想させたからである。

〇1950年代後半には抽象美術運動が勃興した。戦前世代の作家たちは、キュビスムフォーヴィスムを融合することを選んだが、若い世代はこの折衷に満足せず、変革を推し進めこれが韓国モダニズムの転換点となった。

〇そうした動きとしてアンフォルメルが挙げられる。日本の介在なしに同時代のヨーロッパとアメリカの潮流に直接かかわった最初の世代であった。

〇1960年代にはアメリカで起こったさまざまな芸術運動が次々に導入された。たとえばハード・エッジ、オプ・アート、ハプニング、コンセプチュアル・アートである。ただし、ポップ・アートが韓国ではほとんど展開しなかった。芸術家は抽象芸術に目を向けており、またポップ・アートのような豊かな消費社会は無縁であった。

〇1980年代になると民衆美術が文学から始まり、美術にも広がった。これはこの10年間の絶え間ない政治的混迷に根差している。民衆美術は、芸術は何よりも大衆の生活を表現すべきという考え方を韓国美術史に持ち込んだ社会批判運動であった。