a curator's memorandum

1日1本論文を読んでメモする、論文マラソンをやっています。

論文マラソン55 東野芳明「「色彩と空間」展 設計図にもとづき工場で制作される新しい表現方法「発注芸術」とは?」

東野芳明「「色彩と空間」展 設計図にもとづき工場で制作される新しい表現方法「発注芸術」とは?」(『美術手帖』276号、1966年12月)

 

〇近代になって建築や彫刻が、宗教的社会的な意味合いの強い「色彩」を追放し、一個の自立した作品となっていった。

〇1966年の春にはニューヨークで「プライマリー・ストラクチャー」展が開催された。東野はそこから刺激を受け、さらに山口勝弘の《Cの関係》から着想を得て「色彩と空間」展を企画した。

〇この展覧会の特色は第一に、色彩を空間の実体とみなそうとすること、第二にブロンズ、石膏、木、鉄といった慣習的な素材はほとんど使われずプレキシグラスやアルミニウム、プラスティック、蛍光塗料が用いられていること、第三に見る者を作品の作り出す空間に引き込み、エンバイラメント(環境)を作り出そうとする意識である。

〇最後の特色は、多くの作品が設計図や青写真に基づいた「発注芸術」であること。作家の作業は設計図という観念の段階で終結する。

〇作家の作業は「設計図という観念」で終結、という言葉から、この当時のキーワードである「観念芸術」「概念芸術」の一つのかたちとして発注芸術をとらえての企画だということがうかがえる。