a curator's memorandum

1日1本論文を読んでメモする、論文マラソンをやっています。

論文マラソン66 天野知香「「他者」をめぐる交錯するまなざし―里見宗次と「オリエント・コールズ」」

天野知香「「他者」をめぐる交錯するまなざし―里見宗次と「オリエント・コールズ」」(『美術フォーラム21』第23号、2011年5月)。

 

「モダン」への覚醒

ポスターの「アール・デコ

「オリエント・コールズ」

 

〇フランスに渡ったグラフィック・デザイナー里見宗次(1904-1996)は、1936年に当時の鉄道省国際観光局のポスター「オリエント・コールズ」を制作。各国、各地域の人々を類型化して描いている。

〇こうした人種や国民の類型化された表象はこの時期フランスでは常套的に用いられており、里見はこの視点を帝国主義時代の日本におけるポスターで取り入れている。それは同時代的に日本でもフランスでも展開されていた、植民地主義のグローバルな文脈の中で促されたまなざしの共有である。

〇また里見は日本女性をおかっぱの姉様人形のような伝統的な姿で表現している。明治から昭和初期に至る日本の近代絵画に描かれた着物の女性像は、留学などを通じて西欧に触れた日本人男性画家がエキゾティックな他者として着物姿の日本女性を「日本人」として再構築したことが既に指摘されている。