a curator's memorandum

1日1本論文を読んでメモする、論文マラソンをやっています。

2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

論文マラソン171 ロザリンド・E・クラウス「第2章 ルイーズ・ブルジョワー《少女》としての芸術家の肖像」

ロザリンド・E・クラウス「第2章 ルイーズ・ブルジョワー《少女》としての芸術家の肖像」(訳:井上康彦『独身者たち』平凡社、2018年)。 〇彫刻家ルイーズ・ブルジョワ(1911-2010)の作品は、フェミニズムに同調し、確かに魅力的な制作を行ってきた。しか…

論文マラソン170 ロザリンド・E・クラウス「第1章 クロード・カーアンとドラ・マールーイントロダクションとして」

ロザリンド・E・クラウス「第1章 クロード・カーアンとドラ・マールーイントロダクションとして」(訳:井上康彦『独身者たち』平凡社、2018年)。 〇様式レベルにおいて、シュルレアリスムは何ももたらなさなかった、内容についての貢献はミソジニーという…

論文マラソン169 桑原規子「アーニー・パイル劇場をめぐる芸術家たち」

桑原規子「アーニー・パイル劇場をめぐる芸術家たち」(『研究紀要』18号、聖徳大学紀要編集委員会編、2007年)。 はじめに 1 伊藤熹朔の舞台美術 2 アーニー・パイル劇場の美術展示 3 日米美術家の交流 〇アーニー・パイル劇場とは1945年12月に連合国軍が…

論文マラソン168 池上裕子「反復のパラドックス―アド・ラインハートとアンディ・ウォーホル」

池上裕子「反復のパラドックス―アド・ラインハートとアンディ・ウォーホル」(『西洋美術研究』11号、2004年)。 1 反復のスペクトル 2 商業美術における反復 3 絵画制作における反復 4 反復のパラドックス:絵画の死と再生 結びにかえて 〇《黒の絵画》…

論文マラソン167 大川内夏樹「北園克衛の「郷土詩」と「民族の伝統」―詩集『風土』・評論集『郷土詩論』を中心に」

大川内夏樹「北園克衛の「郷土詩」と「民族の伝統」―詩集『風土』・評論集『郷土詩論』を中心に」(『横光利一研究』11号、2013年3月)。 1 はじめに 2 地方文化運動/『鯤』/人類学・民俗学 3 「民族の伝統」と「技術性」 4 「郷土」を想起させるもの …

論文マラソン166 木下直之「甲冑図考―高橋由一の新出作品をめぐって」

木下直之「甲冑図考―高橋由一の新出作品をめぐって」(『美術史』131号、1992年2月)。 はじめに 1 事実 2 意味 〇高橋由一の新出作品である《甲冑図》について「なぜ甲冑を描いたのか」「なぜ甲冑だけを描いたのか」「なぜ甲冑を「土用干とか虫干とでも云…

論文マラソン165 池上裕子「ロバート・ラウシェンバーグの《ゴールド・スタンダード》―現代美術のグローバル化に関する一試論」

池上裕子「ロバート・ラウシェンバーグの《ゴールド・スタンダード》―現代美術のグローバル化に関する一試論」(『美術史』158号、2005年3月)。 序 1 日本におけるラウシェンバーグ受容 2 《ジョン・ケージに捧げる》と《トーキョー》 3 篠原有司男のイ…

論文マラソン164 池上裕子「アメリカのスペクタクルー1964年ヴェネツィア・ビエンナーレ考ー」

池上裕子「アメリカのスペクタクルー1964年ヴェネツィア・ビエンナーレ考ー」(『美術史』162号、2007年3月)。 序 1 従来の1964年ビエンナーレ像 2 アラン・ソロモンのアメリカ館戦略 3 グランプリ決定の舞台裏 4 「アンフォルメルを超えて」 結びに代…

論文マラソン163 古田亮「高橋由一 甲冑圖」

古田亮「高橋由一 甲冑圖」(『國華』1382号、2010年12月)。 〇1989年の時点で所蔵する靖國神社は本作の作者がわかっていなかった。展示を契機とした調査の結果、裏の木枠の文字から作者が高橋由一と分かった。 〇甲冑圖とあるが、甲冑だけではなく兜、矢な…

論文マラソン162 アド・キルー「第7章 シュルレアリスムの周辺で」

アド・キルー「第7章 シュルレアリスムの周辺で」(訳:飯島耕一『映画のシュルレアリスム』フィルム・アート、1997年)。 未来派とダダ ダダからシュルレアリスムへ シュルレアリストたちと映画 並行して 新しい感受性のほうへ 〇美術、文学と連動するように…

論文マラソン161 フランソワ・カラデック「第1章 完全な幸福」

フランソワ・カラデック「第1章 完全な幸福」(訳:北山研二『レーモン・ルーセルの生涯』リブロポート、1989年)。 〇フランスの小説家、レーモン・ルーセルの伝記。1877年裕福な家庭に生まれる。母親の勧めもあり音楽(ピアノ)の道に進むが、10代より詩を…

論文マラソン160 ルッケル瀬本阿矢「第3章 シュルレアリスムと日本の女性芸術家」

ルッケル瀬本阿矢「第3章 シュルレアリスムと日本の女性芸術家」(『シュルレアリスムの受容と変容』文理閣、2021年)。 1 シュルレアリスムと日本の女性芸術家との関係 2 日本における女性詩人の境遇 3 上田静栄の詩作について 4 左川ちかとダリの作品…

論文マラソン159 ルッケル瀬本阿矢「第2章 ヨーロッパ的原理としてのシュルレアリスムー日本における受容と変容」

ルッケル瀬本阿矢「第2章 ヨーロッパ的原理としてのシュルレアリスムー日本における受容と変容」(『シュルレアリスムの受容と変容』文理閣、2021年)。 1 日本のシュルレアリスムへの関心の高まり 2 イメージと言葉の剥離―瀧口修造と日本のシュルレアリス…

論文マラソン158 ルッケル瀬本阿矢「第1章 男性原理としてのシュルレアリスム」

ルッケル瀬本阿矢「第1章 男性原理としてのシュルレアリスム」(『シュルレアリスムの受容と変容』文理閣、2021年)。 1 「シュルレアリスト」とはだれか 2 男性シュルレアリストの描く女性の理想像 3 アナイス・ニンに見るシュルレアリスムの受容ーイメー…

論文マラソン157 桑原規子「恩地孝四郎の《『氷島』の著者・萩原朔太郎像》をめぐって―占領期における欧米人コレクターと創作版画の国際的評価」

桑原規子「恩地孝四郎の《『氷島』の著者・萩原朔太郎像》をめぐって―占領期における欧米人コレクターと創作版画の国際的評価」(『藝叢』23号、2006年)。 はじめに 1章 《『氷島』の著者・萩原朔太郎像》について 2章 占領期における欧米人コレクターと戦後…

論文マラソン156 費大為「始まりの20年 80年代と90年代の中国現代美術」

費大為「始まりの20年 80年代と90年代の中国現代美術」訳:秋山珠子(『アヴァンギャルド・チャイナ』図録、国立国際美術館ほか、2008年)。 背景 1. 80年代 Ⅰ 星星画会 Ⅱ "85ニューウェーブ('85新潮)"運動 2. 90年代 Ⅰ 海外における中国現代美術 Ⅱ シニカル…

論文マラソン155 角本麻衣子「マルセル・デュシャンと「射影」—1910年代の制作に関する一考察―」

角本麻衣子「マルセル・デュシャンと「射影」—1910年代の制作に関する一考察―」(『美術史論集』第11号、神戸大学美術史研究会、2011年2月)。 はじめに デュシャンとキュビスム 四次元の表象 吊るされたレディメイド 結びにかえて 〇グレーズやメッツァンジ…

論文マラソン154 小林俊介「難波田龍起・松本竣介・靉光の油彩技法について」

小林俊介「難波田龍起・松本竣介・靉光の油彩技法について」(『美術史』145号、1998年10月)。 はじめに 1 難波田・竣介・靉光の油彩技法―油彩の透明性を生かした重層的技法― 2 ルオーの影響―古典的重層技法の応用者として― 3 技法の背景―「生」の表出・…

論文マラソン153 脇田裕正「第4章 文壇の批評家としての春山行夫―ジェイムズ・ジョイスと「「意識の流れ」と小説の構成」」

脇田裕正「第4章 文壇の批評家としての春山行夫―ジェイムズ・ジョイスと「「意識の流れ」と小説の構成」(『降り坂を登る―春山行夫の軌跡 1928-35』松籟社、2023年)。 はじめに 1 「ポエジイ」の喪失 2 「文学の偽浪漫主義的傾向について」―文学の自然主義…

論文マラソン152 脇田裕正「第3章 「全部が一度に僕達の世界に流れこんできた」―文芸批評家としての春山行夫」

脇田裕正「第3章 「全部が一度に僕達の世界に流れこんできた」―文芸批評家としての春山行夫」(『降り坂を登る―春山行夫の軌跡 1928-35』松籟社、2023年)。 1 小説の勃興―『詩と詩論』の終刊と『文学』創刊 2 批評家の条件と二つの『詩の研究』 3 「造語…

論文マラソン151 脇田裕正「第2章 ユージン・ジョラスーV・F・カルヴァートンー春山行夫―モダニズム文学とプロレタリア文学の間で」

脇田裕正「第2章 ユージン・ジョラスーV・F・カルヴァートンー春山行夫―モダニズム文学とプロレタリア文学の間で」(『降り坂を登る―春山行夫の軌跡 1928-35』松籟社、2023年)。 はじめに 1 『詩と詩論』の中の『トランジション』―反ジョラス的モダニズムと…

論文マラソン150 ジョン・ソルト「第8章 表意文字の突然変異体」

ジョン・ソルト「第8章 表意文字の突然変異体」訳:ヤリタミサコ、田口哲也(『北園克衛の詩と詩学 意味のタペストリーを裁断する』思潮社、2010年)。 〇北園は前衛詩というジャンルにおいて、西洋で最も知られている日本人であり、多くの詩を「輸出」し、…

論文マラソン149 脇田裕正「第1章 モダニズムの詩人の肖像―春山行夫の「ポエジイ」と言語の実験」

脇田裕正「第1章 モダニズムの詩人の肖像―春山行夫の「ポエジイ」と言語の実験」(『降り坂を登る―春山行夫の軌跡 1928-35』松籟社、2023年)。 はじめに 1 「ポエジイ」とは何であるか―主観と客観の間で 2 新しい詩人像と「ポエジイ」―革新としての詩論 3…

論文マラソン148 ジョン・ソルト「第7章 意味のタペストリーを裁断する」

ジョン・ソルト「第7章 意味のタペストリーを裁断する」訳:高田宣子、田口哲也(『北園克衛の詩と詩学 意味のタペストリーを裁断する』思潮社、2010年)。 〇戦後の北園が再び「前衛詩」へと戻り、代表的な詩集『黒い火』をとりあげ詳細に分析する。その分…

論文マラソン147 ジョン・ソルト「第6章 ファシズムの流砂」

ジョン・ソルト「第6章 ファシズムの流砂」訳:ヤリタミサコ、鷲尾郁、田口哲也(『北園克衛の詩と詩学 意味のタペストリーを裁断する』思潮社、2010年)。 〇この章では北園克衛の戦時中の活動を時系列に追ってゆく。この時期の詩作について、これまでほと…

論文マラソン146 金子隆一「新興写真研究会についての試論」

金子隆一「新興写真研究会についての詩論」(『東京都写真美術館紀要』3、2002年)。 1. はじめに 2. 新興写真研究会の結成 3. 新興写真研究会の主張 4. もうひとつの新興写真研究会 5. 新興写真研究会の終焉 〇木村専一(1891-1938)を主幹として結成さ…