a curator's memorandum

1日1本論文を読んでメモする、論文マラソンをやっています。

論文マラソン68 東野芳明「美術とデザインの間」

東野芳明「美術とデザインの間」(『色彩と空間』展図録、南画廊、1966年)。

 

〇東野が企画した「色彩と空間」展図録によせたテキストである。出品作家は、サム・フランシス、アン・トゥルーイット、磯崎新、五東衛(清水九兵衛)、田中新太郎、三木富雄、山口勝弘、湯原和夫の8名。

〇テキストのタイトルが「美術とデザインの間」。出品作家にはいわゆる「デザイナー」はいない。しかし建築家・磯崎新や彫刻家・陶芸家の清水九兵衛、「発注芸術」の作家である山口勝弘、湯原和夫などクロスジャンルの傾向が見てとれる。

〇東野はデザインを、辞書の定義を引用して「あるものを作る場合に心の中に描かれた計画あるいは図式。行為によって実現されるべき観念の予備的な概念」として、その要素を含む「発注芸術」を、「物体や行為との衝突から生まれる恣意や偶然や自発性をこそ、自我表現の不可欠な要素とみなす抽象表現主義」への、ひとつの反省と述べる。