a curator's memorandum

1日1本論文を読んでメモする、論文マラソンをやっています。

2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

論文マラソン110 苫名直子「道化像―多様性と悲哀の自画像」

苫名直子「道化像―多様性と悲哀の自画像」(『道化たちの詩 日本近代美術における"道化”』図録、北海道立三岸好太郎美術館、1997年)。 1. 西欧の自画像 2. 日本における道化の大衆的イメージの形成 3. 日本の画家たちの道化 4. 悲哀の自画像 終わりに 〇…

論文マラソン109 江川佳秀「伊原宇三郎をめぐって―正統さと異質さと」

江川佳秀「伊原宇三郎をめぐって―正統さと異質さと」(『伊原宇三郎展』図録、目黒区美術館ほか、1994年)。 〇1920年代、フランスに留学した日本人画学生の間でピカソの新古典主義が注目を集めていたとき、伊原もその影響を受けた。伊原は1925~29年まで留学…

論文マラソン108 池上裕子「世界美術史の見地から戦後アメリカ美術の台頭を考える」

池上裕子「世界美術史の見地から戦後アメリカ美術の台頭を考える」(『美術史論集』10号、神戸大学美術史研究会、2010年2月)。 はじめに―「アメリカ」の両義性 1. ラウシェンバーグと「世界美術史」 2. トランスナショナルな前衛美術のネットワーク (1)…

論文マラソン107 加藤奈保子「美術史的観点から見た鑑賞学習における「知識」の扱い方をめぐって」

加藤奈保子「美術史的観点から見た鑑賞学習における「知識」の扱い方をめぐって」(『人間発達文化学類論集』第35号、2022年3月)。 1. はじめに 2. 美術作品はコミュニケーションのツール? 3. 美術作品を成立させる要素 4. 鑑賞と知識 5. おわりに 〇…

論文マラソン106 宮田舞、山内保典、岡田猛「現代美術に対するイメージの変更を支援する:哲学対話ワークショップの手法を用いた現代美術作品鑑賞の提案」

宮田舞、山内保典、岡田猛「現代美術に対するイメージの変更を支援する:哲学対話ワークショップの手法を用いた現代美術作品鑑賞の提案」(大学美術教育学会『美術教育学研究』第49号、2017年)。 1. 美術鑑賞のイメージの変更 2. 現代美術の鑑賞活動への哲学…

論文マラソン105 栗原真未「瑛九作品におけるリトグラフ―媒体の横断と「デッサン」的技法」

栗原真未「瑛九作品におけるリトグラフ―媒体の横断と「デッサン」的技法」(『石井コレクション研究1:瑛九』筑波大学芸術学系、2010年)。 はじめに 1. リトグラフにおける作品制作の姿勢 2. リトグラフの技術的側面と周囲の認識 おわりに ◯銅版画からリト…

論文マラソン104 田島直樹「一制作者から見た瑛九銅版画―その制作工程と刷りについて」

田島直樹「一制作者から見た瑛九銅版画―その制作工程と刷りについて」(『石井コレクション研究1:瑛九』筑波大学芸術学系、2010年)。 1. 銅版画との出会い 2. 作品分析:石井コレクション所蔵作品を中心に 3. 《家族(B)》に見る、刷りが作品に及す効果…

論文マラソン103 増田玲「1977年の中平卓馬」

増田玲「1977年の中平卓馬」(『東京国立近代美術館研究紀要』第24号、2020年)。 はじめに 1. 1977年に至る中平の活動の概要 2. 沖縄・奄美・吐噶喇 3. 中上健次と「第三世界論」 4. 『決闘写真論』と「デカラージュ」、そして「街路」 おわりに 〇写真…

論文マラソン102 栗田秀法「戦後の国際版画黎明期の二つの版画展と日本の版画家たち」

栗田秀法「戦後の国際版画黎明期の二つの版画展と日本の版画家たち」(『名古屋芸術大学研究紀要第37巻』2016年)。 はじめに 1 シンシナティ現代色彩石版画国際ビエンナーレ展 2 ルガーノ白と黒国際展 (1)第1回展 (2)第2回展以降 おわりに 〇日本…

論文マラソン101 城山萌々「作品《街》から見る瑛九のリトグラフ制作プロセス」

城山萌々「作品《街》から見る瑛九のリトグラフ制作プロセス」(『石井コレクション研究1:瑛九』筑波大学芸術学系、2010年)。 1. リトグラフの仕組み 2. 瑛九リトグラフの技巧的な特徴 3. 石井コレクションの《街》 4. 制作プロセスの分析と再現実験 5. 主…

論文マラソン100 石川千佳子「『瑛九による久保貞次郎宛エスペラント書簡』について」

石川千佳子「『瑛九による久保貞次郎宛エスペラント書簡』について」(『美術教育研究』21、2015年)。 はじめに 瑛九の画業における書簡集の位置 記述例1:銅版画制作に関わるもの 記述例2:美術批評に関わるもの ①制作の理念を求めて ②同時代の美術家への…

論文マラソン99 大谷省吾「瑛九から山田光春への書簡 1938-1955年」

大谷省吾「瑛九から山田光春への書簡 1938-1955年」(『東京国立近代美術館研究紀要』第24号、2020年)。 〇瑛九(1911-1960)が画家・山田光春(1912-1981)に宛てた書簡を含む資料が平成24年度に東京国立近代美術館に収蔵された。 〇書簡のうち1935-1937年分…

論文マラソン98 上野真歩「【報告文】第4回いきヨウヨウ講座 「おしゃべりな布をつくろう」について」

上野真歩「【報告文】第4回いきヨウヨウ講座 「おしゃべりな布をつくろう」について」(『福岡市美術館研究紀要』第7号、2019年)。 はじめに テーマの決定 準備 実施内容 まとめ 〇平成25年度より福岡市美術館の教育普及事業として行っている「いきヨウヨウ…

論文マラソン97 福井泰民「明治の牙彫置物盛衰史」

福井泰民「明治の牙彫置物盛衰史」(『日本の象牙美術』図録、渋谷区立松濤美術館、1996年)。 根付から置物彫刻へ 東京彫工会のこと 西崖の批評でたどる明治30年代の牙彫りの流れ 東京美術学校牙彫部のこと 大正以降の象牙彫刻 牙彫作家、玉山、俊明、光明の…

論文マラソン96 飯尾由貴子「岸田劉生の日本画について」

飯尾由貴子「岸田劉生の日本画について」(『木村定三コレクション研究研究』愛知県美術館、2009年度)。 1. 劉生と南画 2. 木村コレクションにおける岸田劉生 3. 大正期における南画 1)南画の復興―新南画をめぐって 2)萬鉄五郎と岸田劉生 4. 劉生の…

論文マラソン95 門田園子「「輸出向彫刻家具」について : ウラジオストク市で の調査を中心に」

門田園子「「輸出向彫刻家具」について : ウラジオストク市で の調査を中心に」(『デザイン理論』61、2013年1月)。 はじめに 1. 輸出向彫刻家具と洋家具の相違、輸出向彫刻家具の先行研究 2. 輸出向彫刻家具の製作 3. 輸出向彫刻家具の意匠:極東ロシア…

論文マラソン94 中嶋泉「エロスの政治学―1960-70年代の「日本の」美術」

中嶋泉「エロスの政治学―1960-70年代の「日本の」美術」(『ジェンダー研究』25、2022年)。 1. はじめに 2. 「エロス」の文化と「日本の」アーティスト 3. 性器の表現と「エロス」 4. エロスの抹消と男性性 5. おわりに 〇1960、70年代の「日本人」ない…

論文マラソン93 速水豊「遅延とエピデミック―日本におけるダリ受容―」

速水豊「遅延とエピデミック―日本におけるダリ受容―」(『ショック・オブ・ダリ サルバドール・ダリと日本の前衛』図録、三重県立美術館ほか、2021年)。 はじめに 1. 最初の出会い 2. 多面的な出現 3. 憚られる存在 4. 認知を加速したもの 5. 日本の絵…

論文マラソン92 塚田美香子「戦前の日本におけるピカソの受容―様式変遷で見るピカソのイメージ」

塚田美香子「戦前の日本におけるピカソの受容―様式変遷で見るピカソのイメージ」(『スペイン・ラテンアメリカ美術史研究』21、2020年4月)。 はじめに 1. 1910年代:ピカソと新美術運動の同時的受容 2. 1920年代:浸透するピカソの古典主義様式と離隔する…

論文マラソン91 鬼本佳代子「休館中におけるアウトリーチ活動「どこでも美術館」について」

鬼本佳代子「休館中におけるアウトリーチ活動「どこでも美術館」について」(『福岡市美術館研究紀要』第7号、2019年3月)。 1 実現まで~何のためにアウトリーチ活動をするのか 2 教材について 3 「どこでも美術館」アンケートから読み取れること 4 終…

論文マラソン90 三輪健仁「無名の顔―辰野登恵子の抽象について」

三輪健仁「無名の顔―辰野登恵子の抽象について」 抽象の画家 画家の眼 画家の手 丸、または無名の顔 〇画家・辰野登恵子(1950~2014)の80年代から始まる画面の「形象」として、「S」字や花模様のような装飾的なかたち、円または丸、複数の矩形を組み合わせた…

論文マラソン89 倉石信乃「中平卓馬と反ツーリズムの思考」

倉石信乃「中平卓馬と反ツーリズムの思考」(『美術フォーラム21』30号、2014年)。 ◯1960年代後半から約10年間にわたり、中平卓馬は写真家としてのみならず、既存の映像表現と政治への苛烈な批判者として健筆をふるった。 ◯高度経済成長下の日本では国鉄の一…

論文マラソン88 中原佑介「アイディアとしての芸術」

中原佑介「アイディアとしての芸術」(初出『SD』44号、1968年7月)。 ◯中原は「アイディアとしての芸術」を主に欧米の例からいくつも挙げる。ヘロンの人形、レオナルド・ダ・ヴィンチのデッサン、ルクーの建築のプラン、リシツキーのプルーン、オルデンバー…

論文マラソン87 伊村靖子「「色彩と空間」展から大阪万博まで―60年代美術とデザインの接地面」

伊村靖子「「色彩と空間」展から大阪万博まで―60年代美術とデザインの接地面」(『美術フォーラム21』30号、2014年11月)。 はじめに 「デザイン」の意義の拡張 美術の「デザイン」化―「色彩と空間」展の構想 美術にとっての「設計」 〇美術界においてデザイ…

論文マラソン86 小倉忠夫「<作家研究>菅井汲」

小倉忠夫「<作家研究>菅井汲」(『季刊版画』10号、1971年)。 〇菅井汲(1919~1996)はタブローと渡仏後はじめた版画も制作しており、両者はメディアは違うが様式的、質的にも差異はない。 〇菅井は日本画を学び、阪急電鉄の宣伝部でポスターを描いていた時…

論文マラソン85 大岡信「現代作家のなかの伝統 <1>多田美波の「光」」

大岡信「現代作家のなかの伝統 <1>多田美波の「光」」(『藝術新潮』1969年1月号)。 〇お椀をでこぼこにしたような形のアルミ・メッキで輝く多田美波(1924~2014)の作品は、高い輝度とともに、複雑にゆがんだ曲面が光を様々な方向に散らすため一種の流動…

論文マラソン84 北園克衛「G・G・P・GからVOUまで」

北園克衛「G・G・P・GからVOUまで」(『本の手帖』3巻3号、1963年)。 〇詩人・北園克衛(1902~1978)による1920~30年代に自らが関わって発行した美術、文学に関連する諸雑誌の発刊の経緯や人間関係の覚書である。 〇タイトルにある「G・G・P・G」は「ゲエ・…

論文マラソン83 小泉淳一「中原實に於けるシュルレアリスムへの軌跡」

小泉淳一「中原実に於けるシュルレアリスムへの軌跡」(『茨城県近代美術館研究紀要』(1)、1991年)。 はじめに 1 フランスかドイツか、中原實の滞欧体験 2 中原實のダダ、村山知義のダダ 3 シュルレアリスムへの接近 4 詩人北園克衛との邂逅 5 テオリサ…

論文マラソン82 大熊敏之「彫塑と工芸のはざまで―明治期の牙彫置物」

大熊敏之「彫塑と工芸のはざまで―明治期の牙彫置物」(『日本の象牙美術』図録、渋谷区立松濤美術館、1996年)。 〇幕末から明治初頭にかけて「牙彫」はマイナーな分野であった。根付や印籠に用いられていたがそれ以外はほとんどなかった。 〇第1回内国勧業博…

論文マラソン81 松井みどり「網目の彼方に:森山大道におけるラディカルな視覚性」

松井みどり「網目の彼方に:森山大道におけるラディカルな視覚性」(『光の狩人―森山大道1965-2003』図録、島根県立美術館ほか、2003年)。 1 日本という枠を超えて:ラディカルさの仮説 2 写真的無意識と境界なき創造性:否定的視覚性のもたらすもの 3 存…