a curator's memorandum

1日1本論文を読んでメモする、論文マラソンをやっています。

論文マラソン54 高松次郎「世界拡大計画―不在性についての試論」

高松次郎「世界拡大計画―不在性についての試論」(『機関』(『形象』改題)第9号、1964年9月。『世界拡大計画』水声社、2003年に再録)。

美術家・高松次郎(1936-1998)の文章であり、60年代のキーワードでもある「不在」を使用した2つめのテキストである。

光田由里の『高松次郎 言葉ともの 日本の現代美術1961-72』(水声社、2011年)の解釈を手がかりに読んでいった。

 

1963年5月に書いた「"不在体”のために」から1年以上経ったテキストでは「不在体」から「不在性」と改めている。

充足性はいつも上昇(徹底)を目指す。この一文は、「極致に向う充足性」のための方法論であり、計画書である。

「充足性」は何か、という点についてナボコフの『ロリータ』、ヘミングウェイの『老人と海』などを引き合いにし、充全性とは不可能の中にしかない、と結論づける。

未来のなかの可能性、蓋然性、未決定性、欠如あらゆる不在の中にしか充足性はないとし、今後の不在性についての思考を「世界拡大計画」と名付けた。