論文マラソン63 渡抜由季「サルバドール・ダリ《ポルト・リガトの聖母》に隠された構図の謎」
渡抜由季「サルバドール・ダリ《ポルト・リガトの聖母》に隠された構図の謎」(『福岡市美術館研究紀要』第9号、2021年3月)。
はじめに
2 作者と作品基本情報
3 予想される構図の検討
4 ダリが隠した構図の意味
5 まとめ
〇福岡市美術館所蔵作品であるサルバドール・ダリ《ポルト・リガトの聖母》の紫外線や赤外線を利用した光学調査による事実や知見をまとめた論考。
〇ダリは遠近法と幾何学的な作図という2つの手段を綿密に計画し、利用していた。それは当時ダリが宗教や、ダ・ヴィンチの絵画表現への関心をもっていたこと、数学者マティラ・ギガの助けがあって可能となった。
〇遠近法と幾何学的な作図が描かれた要所要所に祭壇や台座など重要なモチーフが配置され、中心にはガラとキリストがバランスよく納められている。
〇ダリにとっての構図とは、信仰がもたらす安寧と原子物理学の正確性、そしてガラを結び付けるためのツールであったのかもしれない、と渡抜は述べる。
〇数学や科学への関心をもつアーティストは多数いるが、1910~20年代に作品に反映させた例としてはマルセル・デュシャンが挙げられる[メモ]。