a curator's memorandum

1日1本論文を読んでメモする、論文マラソンをやっています。

論文マラソン187 福のり子、平野智紀、北野諒『これからどう進む?対話型鑑賞のこれまでとこれから』

目次

1章 逢坂恵理子・福のり子「対話型鑑賞の黎明期:アメリカ→ドイツ→日本」

2章 原泉「美術館と対話型鑑賞」

3章 北野諒「学校教育と対話型鑑賞」

4章 北野諒「科学/医療と対話型鑑賞」

5章 平野智紀「ビジネスパーソンと対話型鑑賞」

6章 森功次「対話型鑑賞の功罪:美的知覚の観点から」

7章 伊達隆洋「対話型鑑賞ファシリテーターの育成と課題」

8章 北野諒・平野智紀「対話型鑑賞の今後」

 

MoMAで始まった対話型鑑賞が日本に上陸して30年。それを記念して2022年8月に東京国立博物館で「VTC/VTS日本上陸30周年記念フォーラム2022 対話型鑑賞のこれまでとこれから」が開催された。本書はフォーラムの記録集であり、これからに向けてフォーラム後に行われた考察である。

〇日本の黎明期である1991年の最初のきっかけ(福さんと逢坂さんの出会い)などは貴重な記録である。

〇対話型鑑賞が美術館だけではなく、学校、医療、ビジネスなど様々な場に展開されており、その差異や目的の違いなどもそれぞれの章で語られる。

〇対話型鑑賞の功罪、という点では誤った対話型鑑賞の目的、すなわち「作品は自由に見ていい」だったり、ファシリテーターが最初に注意事項を促すなどをしないと、ただ話して気持ちよくすべての意見が受け入れられることになると、本当に行う意味があるのか、という点について、実践してきた森氏の意見が示唆的である。