a curator's memorandum

1日1本論文を読んでメモする、論文マラソンをやっています。

論文マラソン188 金英那「東洋のリリシズムを求めて―金煥基の作品」

金英那「東洋のリリシズムを求めて―金煥基の作品」『韓国近代美術の百年』(神林恒道監訳、三元社、2011年)

 

〇韓国のモダニスト画家・金煥基(キム・ファンギ)。彼は1930年代、初期抽象芸術の先駆者であった。1950年代後半から亡くなる1974年までフランスや米国に居住しており、国際的に活躍していた数少ない韓国のアーティストであった。

〇19歳のとき、東京の錦城高等学校に転入、卒業し、1933から36年まで日芸に在籍した。その頃の作品はほとんど残っていないが、大学では木村荘八と長島重二郎が西洋画の教授を務め、柳宗悦が美術史を教えていた。

〇1935年頃からキムは教師以外の芸術家たち、村井正誠、津田正周、オノサト・トシノブらとも交流していた。彼らは1937年の自由美術家協会に参加していた。キムとほかの文化学院の韓国人学生らもこの展覧会に加わっていた。

〇キムはいかにして洋画の素材と技法でアジア的アイデンティティを表現できるかという問いに関心を抱いていた。最終的にはアジア的様式である水墨画の世界へと行きついた。