a curator's memorandum

1日1本論文を読んでメモする、論文マラソンをやっています。

論文マラソン53 尾崎信一郎「痕跡―苛酷なる現実としての美術」

尾崎信一郎「痕跡―苛酷なる現実としての美術」(『痕跡―戦後美術における身体と思考』図録、京都国立近代美術館ほか、2004-05年)。

 

序章

第1章

 1.《赤い丸太》 2.《人体測定》 3.《無題(レイプ現場)》 4.《消されたデ・クーニングのドローイング》 5.《自動車タイヤプリント》 6.《東京ビエンナーレのためのプラン》

第2章

 1.反類像 2.反現在性 3.反可視性 

 

〇「痕跡」というタイトルが示す通り、展覧会において「指標としての美術」を探求することを目的としている。

〇1950年代の具体美術協会の白髪一雄、嶋本昭三らの作品を見ていくと、血や傷、暴力といった身体と深く関わり、痛みが想起される。こうした「破壊」を通じた「痕跡」はいわゆるモダニズム美術史が抑圧してきたもう一つの現代美術史を浮かび上がらせる。

〇イブ・クラインによる《人体測定》は匿名性のある女性の身体を「絵筆」として、転写してゆく。

〇ウィーン・アクショニズムの作家たち、アナ・メンディエッタのパフォーマンスによる血液や尿といった体液、また身体や皮膚をカンヴァスとみなす一連の作品も「身体」について再考を促す。