a curator's memorandum

1日1本論文を読んでメモする、論文マラソンをやっています。

論文マラソン69 高松次郎「世界拡大計画(2)不在性について」

高松次郎「世界拡大計画(2)不在性について」(1970年3月)。

 

1 関係の発生

2 関係の分析と無関係性の基盤

3 関係の問題点

4 無関係性の発生と分析

5 無関係性のために

 

〇言葉は曖昧だけれども一度発生すると、ものにからみついて言葉と一体となる。あらゆる人工物、自然、生身の人間、いろいろな事柄、追憶、構想、イメージ、思考など。そのようにからみつく「糸」の種類を分類することは不可能だが、機能や構造は同じで、それは「関係」である。

〇しかしこの関係の「糸」は絶対的ではなく、いつも関係の糸の交換や再編成がなされる。そして私たちの意識も関係の混乱や断絶、つまり<無関係性>の事物に立ち合いたいという欲求が生まれる。

〇私たちはよく理解したもの、繰り返し触れるもの、慣れ親しんだものに対しては麻痺してしまう。工程が繰り返されると磨きがかけられ、円滑化する。しかしその現象が高度に進むと意識は息苦しくなり、これを「倦怠」と呼ぶ。

〇関係の糸のすべてが閉塞的とは限らず、無関係性がたぐり寄せられるのはほとんどの場合、関係の糸からである。

無関係性は一つの状態である。それは関係の不在性であり、もろもろの不在性の中核をなすものである。そしてすべての不在性が証明しているように、そこにも決して完璧なものはありえず、持続性も決して強いものではない。

〇ここではじめて「関係」という言葉が使用される。同時代のもの派の作家からの影響だろうか。