a curator's memorandum

1日1本論文を読んでメモする、論文マラソンをやっています。

2023-01-01から1年間の記事一覧

論文マラソン129 大谷省吾「作品研究 高松次郎の《日本語の文字》はなぜ版画でなければならなかったのだろう?」

大谷省吾「作品研究 高松次郎の《日本語の文字》はなぜ版画でなければならなかったのだろう?」(『現代の眼』576号、2009年6・7)。 〇高松次郎の《日本語の文字》は紙面中央に「この七つの文字」と記されているだけのシンプルな作品である。1970年12月の…

論文マラソン128 城山萌々「瑛九のリトグラフ:再現制作に基づく分版の仕組みの分析」

城山萌々「瑛九のリトグラフ:再現制作に基づく分版の仕組みの分析」(『芸術学研究』17号、2012年)。 1. はじめに 2. 日本におけるリトグラフ表現の変化とその背景 3. 再現制作に基づく分析の目的と方法 4. 分版の仕組みと表現の関係について 5. まと…

論文マラソン127 中嶋泉「ニューヨークと草間彌生―1959年と1989年の批評から見る―」

中嶋泉「ニューヨークと草間彌生―1959年と1989年の批評から見る―」(田中正之編『西洋近代の都市と芸術7 ニューヨーク』竹林舎、2017年)。 〇草間彌生のニューヨークにおける1959年と1989年周辺の批評をとりあげ、彼女の代表作ネット・ペインティングについ…

論文マラソン126 大谷省吾「作品研究 山田光春旧蔵瑛九作品および資料について」

大谷省吾「作品研究 山田光春旧蔵瑛九作品および資料について」(『現代の眼』612号、2015年6・7)。 〇東京国立近代美術館は平成24年度に瑛九(1911-1960)に関する作品と資料を多数収蔵した。これらは瑛九と親しく交流し、詳細な評伝『瑛九』を著した画家・山…

論文マラソン125 田中正之「クレス・オルデンバーグとニューヨークの街路―《ストリート》と《都市のスナップショット》をめぐって―」

田中正之「クレス・オルデンバーグとニューヨークの街路―《ストリート》と《都市のスナップショット》をめぐって―」(田中正之編『西洋近代の都市と芸術7 ニューヨーク』竹林舎、2017年)。 《ストリート》のインスタレーション 《ストリート》をめぐる解釈 …

論文マラソン124 白石美雪「ジョン・ケージと東洋、そして日本」

白石美雪「ジョン・ケージと東洋、そして日本」(田中正之編『西洋近代の都市と芸術7 ニューヨーク』竹林舎、2017年)。 1 西海岸の文化的環境の中で 2 ニューヨークにおけるケージと東洋の出会い (1)インド思想 3 ニューヨークにおけるケージと東洋の出…

論文マラソン123 桑原規子「1950年代における日米版画の人的交流―斎藤清・関野準一郎・棟方志功を中心に」

桑原規子「1950年代における日米版画の人的交流―斎藤清・関野準一郎・棟方志功を中心に」(『近代画説』22号、2013年)。 はじめに 3人の版画家の渡米 ジョン・ロックフェラー3世夫妻と戦後の日本版画 日本版画家の「相互交流」 1960年代の再渡米とネットワー…

論文マラソン122 千野香織「日本美術のジェンダー」

千野香織「日本美術のジェンダー」(『美術史』43(2)、1994年3月)。 はじめに 1 現代の美術史学と日本美術史 2 「ジェンダー」という概念 3 平安時代におけるアイデンティティの模索ー「唐」と「和」から成る二重の二重構造 4 ジェンダー理論から見た日本美…

論文マラソン121 エリオット・H・キング「ダリとハルスマン」

エリオット・H・キング「ダリとハルスマン」(『ダリとハルスマン』図録、諸橋近代美術館、2020年)。 〇ダリの最も有名なポートレートを撮影しているのはフィリップ・ハルスマン(1906-1979)である。37年にわたる交流で、有名な《ダリ・アトミクス》や、ダリ…

論文マラソン120 大島徹也「抽象表現主義のニューヨーク」

大島徹也「抽象表現主義のニューヨーク」(田中正之編『西洋近代の都市と芸術7 ニューヨーク』竹林舎、2017年)。 序 1 アート・ステューデンツ・リーグ・オブ・ニューヨーク 2 連邦美術計画 3 57丁目画廊 4 グリニッチ・ヴィレッジ 5 ニューヨーク近代…

論文マラソン119 江崎聡子「ダイアン・アーバス、不在のニューヨーク」

江崎聡子「ダイアン・アーバス、不在のニューヨーク」(田中正之編『西洋近代の都市と芸術7 ニューヨーク』竹林舎、2017年)。 はじめに 1 「ニュー・ドキュメンツ」展とダイアン・アーバス 2 ニューヨークの「裏側」や「地下」を見ること 3 カテゴリーか…

論文マラソン118 小林俊介「近代日本洋画におけるルオーの受容―技法・表現の側面から―」

小林俊介「近代日本洋画におけるルオーの受容―技法・表現の側面から―」(『ルオーと日本展 響き合う芸術と魂ー交流の百年』図録、パナソニック汐留美術館、2020年)。 梅原龍三郎ー「日本的洋画」の形成ー 三岸好太郎ーマチエールの多層性ー 難波田龍起、松本…

論文マラソン117 小林剛「アフター・イメージとしてのニューヨーク―モダニティとモダニズムの狭間で」

小林剛「アフター・イメージとしてのニューヨーク―モダニティとモダニズムの狭間で」(田中正之編『西洋近代の都市と芸術7 ニューヨーク』竹林舎、2017年)。 アルフレッド・スティーグリッツとピクトリアリズム ピクチャレスクなニューヨーク 象徴的なイコ…

論文マラソン116 池上裕子「冷戦の終結と現代美術のグローバル化―ロバート・ラウシェンバーグの国際交流プロジェクト―」

池上裕子「冷戦の終結と現代美術のグローバル化―ロバート・ラウシェンバーグの国際交流プロジェクト―」(田中正之編『西洋近代の都市と芸術7 ニューヨーク』竹林舎、2017年)。 ROCIの構想と実現への道程 ROCI Chinaの開催 歓迎されるROCI、反発されるROCI R…

論文マラソン115 塚田美香子「日本におけるピカソの受容と歴史的回顧―影響、批評、収集の軌跡 第一次受容」

塚田美香子「日本におけるピカソの受容と歴史的回顧―影響、批評、収集の軌跡 第一次受容」(『ブリヂストン美術館館報』第55号、2007年12月)。 はじめに Ⅰ. 1900年代―ピカソとの出会い 1. 1900年パリ万国博覧会 2. 貞奴の舞台 Ⅱ. 1910年代―ピカソとキュビス…

論文マラソン114 冨田章「洋画家たちの青春―光風会をめぐる日本近代洋画史の一断面」

冨田章「洋画家たちの青春―光風会をめぐる日本近代洋画史の一断面」(『洋画家たちの青春―白馬会から光風会へ』図録、東京ステーションギャラリー、2014年)。 〇光風会が結成されたのは1912(明治45/大正元)年、文展が創設されたのはこの5年前の1907年。この…

論文マラソン113 塚田美香子「日本におけるピカソの受容と歴史的回顧―影響、批評、収集の軌跡 第一次受容(続編)」

塚田美香子「日本におけるピカソの受容と歴史的回顧―影響、批評、収集の軌跡 第一次受容(続編)」(『ブリヂストン美術館館報』第56号、2008年12月)。 Ⅰ. 1930年代―日本美術界でのピカソの"レゾン・デートル" 1. ピカソの新古典主義時代の受容 1.1 福島…

論文マラソン112 安藤輝美「猪熊弦一郎《海と女》の頃」

安藤輝美「猪熊弦一郎《海と女》の頃」(『生誕100周年記念 猪熊弦一郎回顧展』図録、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、2003年)。 〇東京美術学校在学中に帝展入選を果たした猪熊は、中退後も帝展を舞台に出品をつづけた。しかし帝展改組をきっかけに仲間と第二…

論文マラソン111 廣田生馬「藤島武二と新制作初期会員たち」

廣田生馬「藤島武二と新制作初期会員たち」(『昭和モダン 藤島武二と新制作初期会員たち』図録、神戸市立小磯記念美術館ほか、2011年)。 〇1936年の帝展改組をきっかけに、美術界統制に抗する画家である猪熊弦一郎、内田巌、佐藤敬、小磯良平、三田康、中西…

論文マラソン110 苫名直子「道化像―多様性と悲哀の自画像」

苫名直子「道化像―多様性と悲哀の自画像」(『道化たちの詩 日本近代美術における"道化”』図録、北海道立三岸好太郎美術館、1997年)。 1. 西欧の自画像 2. 日本における道化の大衆的イメージの形成 3. 日本の画家たちの道化 4. 悲哀の自画像 終わりに 〇…

論文マラソン109 江川佳秀「伊原宇三郎をめぐって―正統さと異質さと」

江川佳秀「伊原宇三郎をめぐって―正統さと異質さと」(『伊原宇三郎展』図録、目黒区美術館ほか、1994年)。 〇1920年代、フランスに留学した日本人画学生の間でピカソの新古典主義が注目を集めていたとき、伊原もその影響を受けた。伊原は1925~29年まで留学…

論文マラソン108 池上裕子「世界美術史の見地から戦後アメリカ美術の台頭を考える」

池上裕子「世界美術史の見地から戦後アメリカ美術の台頭を考える」(『美術史論集』10号、神戸大学美術史研究会、2010年2月)。 はじめに―「アメリカ」の両義性 1. ラウシェンバーグと「世界美術史」 2. トランスナショナルな前衛美術のネットワーク (1)…

論文マラソン107 加藤奈保子「美術史的観点から見た鑑賞学習における「知識」の扱い方をめぐって」

加藤奈保子「美術史的観点から見た鑑賞学習における「知識」の扱い方をめぐって」(『人間発達文化学類論集』第35号、2022年3月)。 1. はじめに 2. 美術作品はコミュニケーションのツール? 3. 美術作品を成立させる要素 4. 鑑賞と知識 5. おわりに 〇…

論文マラソン106 宮田舞、山内保典、岡田猛「現代美術に対するイメージの変更を支援する:哲学対話ワークショップの手法を用いた現代美術作品鑑賞の提案」

宮田舞、山内保典、岡田猛「現代美術に対するイメージの変更を支援する:哲学対話ワークショップの手法を用いた現代美術作品鑑賞の提案」(大学美術教育学会『美術教育学研究』第49号、2017年)。 1. 美術鑑賞のイメージの変更 2. 現代美術の鑑賞活動への哲学…

論文マラソン105 栗原真未「瑛九作品におけるリトグラフ―媒体の横断と「デッサン」的技法」

栗原真未「瑛九作品におけるリトグラフ―媒体の横断と「デッサン」的技法」(『石井コレクション研究1:瑛九』筑波大学芸術学系、2010年)。 はじめに 1. リトグラフにおける作品制作の姿勢 2. リトグラフの技術的側面と周囲の認識 おわりに ◯銅版画からリト…

論文マラソン104 田島直樹「一制作者から見た瑛九銅版画―その制作工程と刷りについて」

田島直樹「一制作者から見た瑛九銅版画―その制作工程と刷りについて」(『石井コレクション研究1:瑛九』筑波大学芸術学系、2010年)。 1. 銅版画との出会い 2. 作品分析:石井コレクション所蔵作品を中心に 3. 《家族(B)》に見る、刷りが作品に及す効果…

論文マラソン103 増田玲「1977年の中平卓馬」

増田玲「1977年の中平卓馬」(『東京国立近代美術館研究紀要』第24号、2020年)。 はじめに 1. 1977年に至る中平の活動の概要 2. 沖縄・奄美・吐噶喇 3. 中上健次と「第三世界論」 4. 『決闘写真論』と「デカラージュ」、そして「街路」 おわりに 〇写真…

論文マラソン102 栗田秀法「戦後の国際版画黎明期の二つの版画展と日本の版画家たち」

栗田秀法「戦後の国際版画黎明期の二つの版画展と日本の版画家たち」(『名古屋芸術大学研究紀要第37巻』2016年)。 はじめに 1 シンシナティ現代色彩石版画国際ビエンナーレ展 2 ルガーノ白と黒国際展 (1)第1回展 (2)第2回展以降 おわりに 〇日本…

論文マラソン101 城山萌々「作品《街》から見る瑛九のリトグラフ制作プロセス」

城山萌々「作品《街》から見る瑛九のリトグラフ制作プロセス」(『石井コレクション研究1:瑛九』筑波大学芸術学系、2010年)。 1. リトグラフの仕組み 2. 瑛九リトグラフの技巧的な特徴 3. 石井コレクションの《街》 4. 制作プロセスの分析と再現実験 5. 主…

論文マラソン100 石川千佳子「『瑛九による久保貞次郎宛エスペラント書簡』について」

石川千佳子「『瑛九による久保貞次郎宛エスペラント書簡』について」(『美術教育研究』21、2015年)。 はじめに 瑛九の画業における書簡集の位置 記述例1:銅版画制作に関わるもの 記述例2:美術批評に関わるもの ①制作の理念を求めて ②同時代の美術家への…