論文マラソン101 城山萌々「作品《街》から見る瑛九のリトグラフ制作プロセス」
城山萌々「作品《街》から見る瑛九のリトグラフ制作プロセス」(『石井コレクション研究1:瑛九』筑波大学芸術学系、2010年)。
1. リトグラフの仕組み
3. 石井コレクションの《街》
4. 制作プロセスの分析と再現実験
5. 主版法による色版の制作
◯瑛九のリトグラフ制作は1956-58年にかけて152点残している。大まかに6種類に分けられる。①初期1版1色刷り②フォトデッサン的表現③抽象表現④白抜きを特徴的に使用した作品⑤クロモリトグラフ的試行⑥点描
◯クロモリトグラフは3原色と黒の掛け合わせによる多色刷り技法で、1836年にゴドフロワ・アンジェルマンが確立。本来、銅版画のメゾチント技法によって行われていた多色刷りを石版印刷で行ったもので、商業的な複製版画技法である。
◯瑛九は版画表現においても自由な表現を求めており、商業印刷的な手法も自分の表現として取り入れている。
◯城田は多色刷りで白抜きが効果的に使われ、筆による太い線やクレヨンのストロークが特徴的な《街》の再現実験を行う。
◯瑛九は体が弱かったこともあり、リトグラフ制作は重労働だった。しかしリトはその速さゆえに次の作品へイメージが湧き上がるままに制作できる。瑛九がリトグラフに取りつかれて2年後、油彩による点描表現を始める。
◯フォトデッサンのイメージと版画的な思考、リトグラフの多色刷りから吸収した色彩、それらの全てが統合されたものが晩年の瑛九の作品群なのではないかと城田は述べる。