a curator's memorandum

1日1本論文を読んでメモする、論文マラソンをやっています。

論文マラソン91 鬼本佳代子「休館中におけるアウトリーチ活動「どこでも美術館」について」

鬼本佳代子「休館中におけるアウトリーチ活動「どこでも美術館」について」(『福岡市美術館研究紀要』第7号、2019年3月)。

 

1 実現まで~何のためにアウトリーチ活動をするのか

2 教材について

3 「どこでも美術館」アンケートから読み取れること

4 終わりに

 

〇2016年から2年半休館することになった福岡市美術館で、「美術館・博物館に来られない/来にくい」層に向けてアウトリーチ活動を検討。

〇目的として以下の3つにしぼる。1休館中も学校団体をはじめ、これまで館を利用していた多くの方々に美術に触れる機会を提供する、2リニューアル開館後は引き続き美術館を訪れるのが困難な方々、少なかった方々に対して積極的に出前講座を行う、3視覚だけでなく触角などの実体験を伴った鑑賞体験を提供する。

アウトリーチのために教材として「DOCOBIボックス」を制作。以下3点に留意した。1館の所蔵品に関連すること、2持ち運びが可能なサイズ・重さであること、3教材を参加者に見せたときに驚きがあること。

アウトリーチの際に児童生徒に対する事前・事後アンケート、教員への事前・事後アンケートをとっている。これによると学校での美術館来館よりも家庭での来館が子どもたちの美術館訪問の有無を左右している。また教員にとっては美術館博物館があまり身近な存在ではないことが読み取れる。

〇学校団体の利用促進をするのはそれほど単純ではない。子供たちへの美術への関心を高める前に教員たちの関心を高める必要がある、と鬼本は結論づける。