a curator's memorandum

1日1本論文を読んでメモする、論文マラソンをやっています。

論文マラソン90 三輪健仁「無名の顔―辰野登恵子の抽象について」

三輪健仁「無名の顔―辰野登恵子の抽象について」

 

抽象の画家

画家の眼

画家の手

丸、または無名の顔

 

〇画家・辰野登恵子(1950~2014)の80年代から始まる画面の「形象」として、「S」字や花模様のような装飾的なかたち、円または丸、複数の矩形を組み合わせた菱形、竹の節のように積み重なった矩形、積み重なった箱状のかたちなどがある。これらの形象の出自ははっきりしていて、本人も述べている。

〇花模様はニューヨークの鋳鉄製の階段の、羽目板のくりぬき模様を写したマーク・フェルドスタインの写真から、70年代のグリッド構造の版画は、地下鉄の壁面タイルからである。彼女にとって制作は常に、フレームの外の現実からやってくるものから開始される。