a curator's memorandum

1日1本論文を読んでメモする、論文マラソンをやっています。

論文マラソン85 大岡信「現代作家のなかの伝統 <1>多田美波の「光」」

大岡信「現代作家のなかの伝統 <1>多田美波の「光」」(『藝術新潮』1969年1月号)。

 

〇お椀をでこぼこにしたような形のアルミ・メッキで輝く多田美波(1924~2014)の作品は、高い輝度とともに、複雑にゆがんだ曲面が光を様々な方向に散らすため一種の流動性をもっている。

〇その思いがけないゆがみこそ、多田作品に自然との深い共鳴をもたらしていると大岡は述べる。

〇もう一つの多田の「光の芸術」は作品自体の内側に光源装置のあるシャンデリアである。彼女のシャンデリアはプラスチック、アクリルを素材としながらキノコやバラといった植物、雲や氷柱や結晶という自然現象、星雲といった天体現象という自然界の原型的イメージを用いている。