論文マラソン168 池上裕子「反復のパラドックス―アド・ラインハートとアンディ・ウォーホル」
池上裕子「反復のパラドックス―アド・ラインハートとアンディ・ウォーホル」(『西洋美術研究』11号、2004年)。
1 反復のスペクトル
2 商業美術における反復
3 絵画制作における反復
4 反復のパラドックス:絵画の死と再生
結びにかえて
〇《黒の絵画》を描き続けたアド・ラインハート(1913-1967)とポップ・アートの旗手であるアンディ・ウォーホル(1928-1987)は全く異なる画風ではあるが、共に「反復」する作品を手掛け、1960年代に画家として成功を収めたという共通点がある。
〇モダニズム絵画における「反復」は「発展としての反復」そして「シミュラークルとしての反復」に分類することができる。後者は発展することなく交替してゆくのみである。そもそも「オリジナル」と「複製」の違いが前者の一回性に対して、後者の反復可能性にあるため、あくまで反復は抑圧される存在である。
〇ラインハートの絵画は前者、ウォーホルの絵画(版画)は後者とみなされた。両者は商業美術家からキャリアをスタートさせているがそこからヒントを得て反復の戦略を突き詰めた結果、絵画そのものを放棄するところまでいったのである。