a curator's memorandum

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論文マラソン166 木下直之「甲冑図考―高橋由一の新出作品をめぐって」

木下直之「甲冑図考―高橋由一の新出作品をめぐって」(『美術史』131号、1992年2月)。

 

はじめに

1 事実

2 意味

 

高橋由一の新出作品である《甲冑図》について「なぜ甲冑を描いたのか」「なぜ甲冑だけを描いたのか」「なぜ甲冑を「土用干とか虫干とでも云ふ」ように描いたのか」「なぜ甲冑図が靖國神社に奉納されたのか」の4点に従って分析する。

〇油彩で描いた本作は明治10年内国勧業博覧会に出品された。そこに「油彩」を出品し、由一は日本における西洋文化を強くアピールしようとしたと考えられる。そこで静物画でもあり、木、金属、布、漆、紙、毛皮・・と描かれる対象の素材が多様で、再現能力を訴えるのに最善だったからといえよう。

〇また「甲冑」は日本独自のモチーフで西洋人好みであった。またこの年は西南戦争の終わった年であり、日本人は人物なき甲冑に「主の死」や「敗北」を感じ取ったであろうし、また日本人好みのテーマであった。

〇《甲冑図》は明治12年に靖國神社に奉納される。靖國神社の前身は招魂社であり、武器陳列場を建設するため遊就館が竣工する。設計はお雇い外国人のジョヴァンニ・ヴィンテンツィオ・カペレッティが行い西洋式の軍事博物館が目指された。