a curator's memorandum

1日1本論文を読んでメモする、論文マラソンをやっています。

論文マラソン78 辻泰岳「「空間から環境へ」展について」

辻泰岳「「空間から環境へ」展について」(『日本建築学会計画系論文集』79-704、2014年10月)。

 

1 序 研究の目的及び既往研究の検討

2「空間から環境へ」展の会場設計

3 ビルディング・エレメントから《有孔体の世界》へ

4 結 再考: 戦後の日本における芸術とテクノロジー

 

◯「空間から環境へ」展(1966年)について展覧会に参加した建築家・磯崎新原広司の視点から考察。

◯この展覧会は銀座松屋で開催され、瀧口修造が催事担当であった小林敦美から相談されたことが契機。磯崎のメモにはエンバイラメントの会のメンバーが書いてあり、なおかつ直前に開催された「色彩から空間へ」展(企画:東野芳明)の出品者と何人か重複している。

◯展覧会の趣旨は「対応」「仕掛」「体験」の3つで、これが「環境」のコンセプトである。

◯これまで論じられてこなかった点として、この「空間から環境へ」展と同時期に銀座松屋の隣のスペースで「グッドデザイン展」(主催:日本デザインコミッティー)が開催されており、コミッティーとエンバイラメントの会では瀧口修造が重複メンバーである。

〇「空間から環境へ」展の会場設計をしたのは磯崎新。ジャンルの区分を取り払った展示とし、内部には暗室も設けた。前例としては1964年に同じく銀座松屋で磯崎は岡本太郎展の展示デザインも行っている。

〇磯崎はエンバイラメントの会のメンバーと共に、エレクトロニクスによる作家と観客の動的な衝突の場として「環境」という言葉を提示している。