論文マラソン34 河田明久「戦時期美術作品の複数制作について」
河田明久「戦時期美術作品の複数制作について」(『近代画説』15号、2006年)。
作者不詳の《学徒出陣》
競作と合作
再制作について
「異人同図」の可能性
東京国立近代美術館にある戦争記録画《学徒出陣》の作者をめぐり、この時期の戦争記録画の複数制作について検証している。
同画題の作品制作を別の作家に同時に依頼する競作、また合作の例を挙げる。ただし全く同じに仕上げることは少なく、何らかの違いを加えることが多い。
戦争記録画は、いわゆるモダンアートの考え方とは違い、主題が最重要である。再制作も珍しくはない。
《学徒出陣》をめぐっては、作者と思われていた人物が自作ではないと語っており、そうすると本人存命中に別人がレプリカをつくったことになるが、現状他にそうした例はない。けれどもその可能性もある、と河田氏は締めくくっている。