a curator's memorandum

1日1本論文を読んでメモする、論文マラソンをやっています。

論文マラソン35 中原佑介「コンクール作品と現代彫刻」

中原佑介「コンクール作品と現代彫刻」(『第一回現代国際彫刻展』1969年)。

 

箱根彫刻の森美術館の開館記念展のカタログに寄稿されたテキスト。1960年代後半の野外彫刻を含めた現代彫刻の考察。

自立した、量塊としての彫刻と台座はかつて切り離せないものだった。今日、野外彫刻と言われるものは、台座つきの彫刻、もう一つは野外の空間と深い関係を見い出そうとする作品である。

コンクール入選作に即して分類すると、1鏡面仕上げで外界が映りこむ作品、2金属またはプラスチックを塗装した彩色彫刻、3透明なアクリル板、ビニールや水を用いた作品。

現代彫刻にみられる素材は大理石やブロンズが中心ではなく、鉄を始めとした金属、プラスチック、アクリル、ビニール、さらに砂や水や空気、既製品の組み合わせも珍しくない。また彫る、刻む、ではなく溶接、流し込みなどであり、生活の中で使用するものの作り方と同じである。そうした彫刻の変化は彫刻そのものに対する考え方が変化にさらされているのと同義である。