a curator's memorandum

1日1本論文を読んでメモする、論文マラソンをやっています。

論文マラソン37 柳沢弥生「三岸好太郎の道化と裸婦像にみるルオーの影響」

柳沢弥生「三岸好太郎の道化と裸婦像にみるルオーの影響」(『ジョルジュ・ルオー三岸好太郎』図録、北海道立三岸好太郎美術館、2007年)。

 

1 道化シリーズーモチーフの源泉ー

2 作風の変化とルオーの影響

3 裸婦像への取り組み

4 ルオーに寄せる関心とさらなる画風の変転

 

三岸好太郎のルオーの影響について実証的に検証。

◯1928〜32年に道化および関連する画題を描く。モチーフの源泉としては浅草のサーカス、上海滞在中のサーカス体験が挙げられる。

◯この頃、ルオー作品は美術雑誌や画集を通じてしばしば紹介される。また三岸が所属していた独立美術協会には里見勝蔵、伊藤廉のように直接ルオーに接した人々がいた。

◯ルオーの太く黒い輪郭線や色彩から影響を受けていると当時から指摘されている。また実作品から研究の跡が見てとれる。

◯ルオーと交流がありコレクターであった福島繁太郎から三岸は高く評価される。また児島喜久雄、伊藤廉もルオーと関連させて三岸の裸婦を論評。

◯三岸はルオーのマチエール、色彩に関心をもち、徐々に線を研究するようになる。それは後のシュルレアリスティックな表現につながるものであり、さらなる画風展開への道筋をつけるものであった。

◯三岸本人が出していないのに、頻繁にルオーの名を評論で挙げられるのは、当時よほどルオーが注目されていたからか。