a curator's memorandum

1日1本論文を読んでメモする、論文マラソンをやっています。

論文マラソン16 中井康之「もの派-再考」

本日の論文は、中井康之「もの派-再考」(『もの派-再考』図録、国立国際美術館、2005年)。

 

はじめに

1 高松次郎とトリックス・アンド・ヴィジョン

2 《位相-大地》と東京ビエンナーレ 「もの派」の形成

3 「もの派」と同時代の動き

おわりに

 

日本の戦後現代美術を考えるときの、重要な動向としての「もの派」、さらにそのエポックメイキングとして関根伸夫の作品《位相-大地》。

本論文は「もの派」について、ある日突然現れた動向ではなく、美術史の流れに位置づけようとする。そのきっかけとして、1968年に石子順造中原佑介によって開催された「トリックス・アンド・ヴィジョン」展を挙げる(1997年にその点を椹木野衣が論じている)。また、関根伸夫が多大な影響を受けた高松次郎の思考や実践も見逃せない。

 そして、関根伸夫、李禹煥やその周辺の作家だけに集約して論じると、この時代の傾向が見えなくなってしまう。全体像を問い直すための展望である。