a curator's memorandum

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論文マラソン27 林卓行「局所化されたミニマル・アート――批評的読解の試み」

林卓行「局所化されたミニマル・アート――批評的読解の試み」(『美術フォーラム21』第30号、2014年11月)。

 

1 <グローバリゼーション>下の<歴史>化

2 「ミニマル・アート」とその再評価

3 ミニマル・アートを受容する

4 ミニアル・アートと藤枝晃雄の批評

 

1960年代半ばにアメリカで強い影響力のあった「ミニマル・アート」の日本での実作を通した受容は、ごく限定的であった。そこで本論では当時現代美術に大きな影響力のあった中原佑介東野芳明、そして藤枝晃雄の美術批評から、ミニマル・アート受容を検証していく。

中原の論では、発注を通したミニマルな形態の実現は、作者が作者としての主体を放棄する(制作していない)ことであり、そのとき「物質」がアーティストという製作主体を乗り越えると述べる。この芸術観は大きな影響力をもち、「もの派」に直結する支配的な言説となってゆく。

一方、藤枝の論ではコンセプチュアル・アートの登場を承けて、それを「能動的」「受動的」な二つの傾向に分類する。前者はデュシャン、クライン、日本における「反芸術」が相当し、美術における制度=文脈を批判する方法である。後者は「概念」的要素を用いる芸術の系譜をたて、その起源を「ミニマル・アート」にみる。

しかし藤枝のミニマル・アート評はほとんど理解されず、また藤枝を支持し、あるいは藤枝が支持するアーティストは少数派であった。当時の大多数の作家、批評家たちには、ミニマル・アートは「物質」や「観念」への解放としてしか受容されなかった。