a curator's memorandum

1日1本論文を読んでメモする、論文マラソンをやっています。

論文マラソン181 金英那「ミレーの農民のイメージ アジアでの受容のされかた」

金英那「ミレーの農民のイメージ アジアでの受容のされかた」『韓国近代美術の百年』(神林恒道監訳、三元社、2011年)

 

ミレー神話

東アジアにおけるミレーの紹介と受容

 

〇韓国におけるミレーの紹介は、19世紀後半以降の布教活動を行った米国の伝道師、そして新しい西洋文化の仲介者であった日本を通じての紹介が考えられる。韓国の知識層は広く日本の本や雑誌を読んでおり、ミレーを知る機会が多かったと推測できる。

〇農民の主題としては視覚芸術に比べて文学の方が圧倒的に多い。またミレーは一般大衆には人気があったが、韓国美術にはそれほど影響を与えていないといえる。それはおそらく、ミレーの名が韓国で知られたとき、既に韓国の美術界ではモダニズム印象主義、ポスト印象主義表現主義の潮流が入ってきたからといえるだろう。

〇ミレーの影響が消えた1980年代に、民衆美術の画家、イム・オクサンは農民の現実に焦点を当てた。

〇ミレー神話といえる物語が広く韓国で知られたとき、韓国の教育制度は1960年代でも日本からの影響を受けていた。金の推測では、ミレーの物語(おそらく日米からの影響)が教科書に取り入れられたのは、韓国の全人口の半分以上がまだ田舎で生活しており、これによって農村社会に大きな関心を呼び起こすことができたからではないか。