論文マラソン177 中尾拓哉「第2章 名指されない選択の余地」
中尾拓哉「第2章 名指されない選択の余地」(『マルセル・デュシャンとチェス』平凡社、2017年)。
〇デュシャンは1918年9月にブエノスアイレスへと旅する。この地で兄のレーモン・デュシャン=ヴィヨンの訃報を知る。そして、この地でデュシャンはチェスへと情熱を傾けていく。
〇ブエノスアイレスではチェスを行うほか、チェスの駒も制作する。特に「ナイト」には思い入れがあり、デュシャンの代名詞ともなる。
〇デュシャンはこの頃から絵画ではなくレディメイドに取り組んでいくが、デュシャンにとっての造形とは「選択」と「配置」によって生み出されるものと説明をする。
〇「選択」と「配置」がキーワードだとすると、レディメイドだけではなく「チェス」もまた選択と配置の繰り返しであるといえよう。ここに、デュシャンの姿勢における芸術とチェスとの連続性を見ることができる。