a curator's memorandum

1日1本論文を読んでメモする、論文マラソンをやっています。

論文マラソン31 田中修二「彫刻史に仲間外れにされた人形・置物」

田中修二「彫刻史に仲間外れにされた人形・置物」(『芸術新潮』第45巻第3号、1994年3月)。

 

 日本の近代彫刻はロダンの影響を受けた荻原守衛に始まる、とされるのが定説であった。しかし、江戸時代の建築装飾や人形、置物、根付などの立体造形から続く「もう一つの彫刻史」によって近代を見直そうとするエッセイ。

 江戸時代から続く彫刻の系譜が語られなくなったのは、明治後期から大正期にかけての彫刻家や彼らを称賛した評論家、文学者、のちの美術史家たちの活動の絡み合いであろう。「もうひとつの彫刻史」は日本の近代美術史が見失いがちな時代の継続性を跡付けるものである。