a curator's memorandum

1日1本論文を読んでメモする、論文マラソンをやっています。

論文マラソン19 角田美奈子「ふりそそぐものたち-青木野枝の造形」

角田美奈子「ふりそそぐものたち-青木野枝の造形」(『青木野枝 ふりそそぐものたち』図録、豊田市美術館名古屋市美術館、2012年)。

 

彫刻家・青木野枝(1958-)の個展にあわせて発行された図録の論考。

青木は主に鉄板を溶断、溶接して制作するが、青木より前の世代の女性で同様の技法を用いる彫刻家を思い浮かべることはできない、と角田は述べる。また彼女の彫刻は選択された主題と、量塊性の欠如すなわち軽やかさや反復性といった造形上の特徴がある。これらの特徴は一般に、美術において制作者が圧倒的に男性が多く占める「彫刻」というジャンルにおいて、きわめて異質というより正反対である。鉄の彫刻は質感や大きさを強調するものが少なくないからだ。そして男女という性差を超えて青木作品の大きな特徴である。この指摘はとても面白く、初めて論じられたのではないかと思う。

また近作および出品作に関連する初期からのモチーフである塔、種子、卵、光、水、漏斗などを論じる。