a curator's memorandum

1日1本論文を読んでメモする、論文マラソンをやっています。

論文マラソン21 江口ゆか「関西の80年代-「アート・ナウ」に見る一断面」

江口ゆか「関西の80年代-「アート・ナウ」に見る一断面」(『関西の80年代』図録、兵庫県立美術館、2022年)。

 

1 はじめに

2 「アート・ナウ」と関西ニューウェーブ

3 出品作から

 ①さまざまなフレーム外し

 ②インスタレーション

 ③「私」のリアリティ

 ④「私」の延長に

4 まとめに代えて

 

1975年以降、兵庫県立近代美術館で、関西一円で発表を続ける新人~中堅作家約30名という枠組みで「アート・ナウ」が毎年開催されてきた。出品作家は10名弱の美術評論家、新聞記者、主催者らの推薦によって選ばれる。何度か人数、推薦方法の枠組みは変更されながら、80年代まで続いてきた。

関西一円は大阪、兵庫、京都あたりまで含まれ、広い範囲にわたり作家数も多い。当時似た枠組みでの展覧会はほぼなく、振り返って検証するに値する重要な活動である。

また50~60年代初頭に生まれた作家らによる活動が「関西ニューウェーブ」と呼ばれるようになる。

複数の推薦者によって選ばれ、80年代の特徴である「一つの流派に収まりきらない」傾向を「アート・ナウ」の出品作家でひもといてゆく。

たとえば矩形以外のフォーマット、レリーフ、そしてインスタレーション、私的イメージ、ユニットやコラボレーションによる制作などのキーワードを挙げ、作品に即して論じている。